岡山は比較的災害が少なく、災害を「自分ごと」にしきれていない面があるのかもしれません。とはいえ近年は、これまでの想定をはるかに超える災害が増えています。
工場が被災すれば、生産は止まります。機械は動かず、工程も止まり、材料や仕掛品も現場に残ります。ここは現実として受け止めるべきことです。
そこでクレスコは岡山県北・長崎県の同業者と被災で操業停止した際は代替生産する連携協定を結んでいます。
その一方で、工場が止まったからといって「会社が止まる」必要はありません。工場停止の局面で最初に重要になるのは、“人”です。
社員・ご家族の安否、出勤可否、道路や公共交通機関の状況。こうした情報を集約し、経営と現場をつなぐ役割が必要になります。
私たちは、災害時の総務・労務部門を「人のコントロールセンター」と位置づけています。
安否情報を集めるだけでは不十分で、状況が更新されるたびに、関係者へ適切に伝え続ける運用こそが問われます。だからこそ、クレスコでは総務の全メンバーが月1回、必ずテレワークを行っています。
テレワークは、働き方改革や福利厚生の文脈で語られがちだと思います。もちろん、それらの側面もあります。しかし私たちが月1回のテレワークを行う理由は、それだけではありません。
会社に来なくても必要な情報にアクセスが可能か。社員との連絡可否、他のメンバーとの情報共有、通常行っている業務を遠隔で継続可能か——この一連を、毎月実際に試して確認しています。
言い換えれば、テレワークそのものを「月1回の小さなBCP訓練」にしているわけです。
災害が起きたときに慌てないための準備を、日常の延長線上で続けています。
#2 生産管理は「サプライチェーンのコントロールセンター」
工場が被災したとき、生産は当然ながら止まります。工場が動かない以上、製造工程は進められないからです。
だからといって、そこで「生産管理まで止めてよい」とは考えません。むしろ、工場停止の局面ほど、生産管理の価値は高まります。なぜなら、事業再開の“距離”を縮めるのは、生産の再スタートを可能にする判断と段取りだからです。
工場が止まっている間に必要になるのは、次のような情報整理です。
進行中の案件、工程の進捗、必要な材料、お客さまとの連絡・連携。さらに、自社でつくれないのであれば、協力会社さまで代替生産できる可能性はあるかどうか。納期回答をどうするのか。
これらは一つひとつが単独の作業ではなく、相互に影響し合う“判断の連鎖”です。
そのため私たちは、調達・設計・生産管理部門を「サプライチェーンのコントロールセンター」と位置づけています。
ここで情報が止まってしまうと、復旧のための優先順位も、必要な手配も、顧客への説明も遅れてしまいます。工場そのものは止まっていても、会社として前に進むための司令塔であり続ける必要があります。
また、生産管理の強みは「現場にいる人だけが分かる」状態を作らないことです。
私たちは、生産管理についてもメンバーの中から毎月最低1人がテレワークを行っています。工場から離れた状態で、どこまで仕事ができるのかを実際に確かめるためです。
実際にやってみると、「この情報は会社に来ないと見られない」「この作業はまだ紙に依存している」といった課題も見えてきます。
私は、むしろそれでいいと思っています。平時に不便が見つかれば、災害が起きる前に直せるからです。
近年は想定を超える災害が増えています。だからこそ、できるだけ早い段階で弱点を見つけ、改善していく姿勢が重要だと考えています。
工場が止まっても、サプライチェーンの制御が止まらない。その状態を、日常の運用で磨き続けたいと思います。